チャーン
利用や契約をやめて離れていく顧客の割合を指し、関係の維持がどれだけ保てているかを映す指標。
意味
チャーンとは、ある期間に利用や契約をやめて離脱していく顧客の割合を指す。獲得の裏側で、どれだけの顧客が去っているかを捉える指標であり、定着(リテンション)と表裏の関係にある。
獲得ばかりに目を向けても、同じ勢いで離脱が起きていれば関係は積み上がらない。チャーンを見ることで、失われている理由に目を向け、関係の穴をふさぐ視点が得られる。
成り立ち
継続的な取引を前提とする事業の分析実務の中で、顧客の離脱を測る指標として用いられてきた。獲得と維持を分けて捉える発想の中で、維持側の課題を映す数値と位置づけられる。
チャーンとリテンションの違い
リテンションは、どれだけ留まったかを見る。チャーンは、どれだけ去ったかを見る。同じ現象の裏表だが、見ている側が違うため、目に入る顧客も変わる。留まった人だけを眺めていると、去った人が何に不満を抱いたかは視野に入ってこない。
使い分けの軸は、何を改善したいかにある。留まった側を見れば、続けている理由を強める手がかりが得られる。去った側を見れば、防げたはずの離脱がどこで起きたかが分かる。前者は伸ばす作業、後者は穴をふさぐ作業で、担う部署も変わることが多い。伸ばす作業とふさぐ作業を、同じ枠で語らない。
リテンションの項へ →チャーンとスイッチングコストの違い
スイッチングコストは、他へ移る際に顧客が負う手間や損失を指す。チャーンは、その手間を上回る不満が生じた結果として現れる数値になる。原因と結果の関係にあり、離脱が少ないという事実だけからは、満足なのか移りにくいだけなのかは区別できない。
見分けたいときは、乗り換えの障害が下がった場面で何が起きるかを考えるとよい。契約の切れ目や、競合が移行の手間を肩代わりしてきたときにまとめて離脱が出るなら、留まっていた理由は満足ではなく障害の側にあったことになる。障害が下がった瞬間の動きが、留まっていた理由を教えてくれる。
スイッチングコストの項へ →使いどころ
継続利用や契約の解約率を追い、関係の維持に課題がないかを見る際に用いられる。数字の増減だけでなく、なぜ離れるのかという理由の把握とあわせて解釈する必要がある。
実務でのチェックポイント
- 離脱した相手を、利用期間の長さで分けて数える。どの時期に集中しているかで、手を入れるべき場面が絞られる。使い始めの層と長く使う層では理由が違う。
- 解約の連絡を受けたとき、理由を同じ形式で記録する仕組みがあるかを確認する。担当者の記憶に留まっているだけでは集計できない。
- 離脱の直前に利用の頻度や連絡の回数が落ちていなかったかを遡って見る。予兆が共通していれば、気づく仕組みをつくれる。兆候は解約の連絡より前に現れる。
- 自社が離脱と数えている条件を確かめる。解約の申し出だけを数え、使わないまま契約が残っている状態を除いていないかを見る。定義が変われば、推移の意味も変わる。
よくある誤解
全体の数値を一つ見て、上がった下がったと語ってしまう扱いが最も多い。離脱は、使い始めて間もない層と、長く使ってきた層とでまったく別の理由から生じる。前者は期待との食い違い、後者は必要の変化や慣れの薄れが背景になりやすく、混ぜたまま平均を見ても手の打ちようがない。期間で分けてから理由を読む順序になる。
離脱をすべて防ぐべきものとして扱う見方にも無理がある。条件の合わない相手を無理に留めれば、支援の負担がかさむうえ、満足しないまま語られることで別の損失も生む。防ぐべき離脱と、受け入れてよい離脱を分けたうえで、前者だけを数えるほうが判断は正確になる。防ぐべき離脱だけを数えるほうが、判断は正確になる。
よくある質問
チャーン率はどれくらいなら問題ないのですか?
一律の目安は置けない。取引の間隔、契約の期間、扱う商品の性質によって妥当な水準は大きく変わるため、他社の数値と比べるより、自社の過去の推移と比べるほうが判断に使える。合わせて、獲得の速さが離脱を上回っているかを見ると、実感に近い評価になる。
離脱した顧客は取り戻せますか?
取り戻せる場合はあるが、条件が変わったかどうかで見込みが分かれる。不満が解消されていないまま働きかけても戻らないため、離脱の理由に対応する変更が実際に済んでいることが前提になる。何が変わったかを具体的に示せない段階での声かけは、逆効果になりやすい。
離脱の理由はどう集めればよいですか?
去る時点で尋ねるより、少し時間を置いてから聞くほうが率直な答えが返ってくることが多い。解約の場面では手続きを早く終えたい心理が働き、当たり障りのない理由が選ばれやすい。選択肢を出すのではなく、次に何を使っているかを尋ねると輪郭が出る。返ってきた答えは、同じ形式で残しておくと後から比べられる。