ブランドブック
ブランドの思想・世界観をまとめた読み物。ガイドラインより情緒寄りで、チームへの共有のために編まれる。
意味
ブランドブックとは、ブランドの思想や世界観をまとめた読み物のことである。仕様書というより、そのブランドが何を大切にしているかを物語として伝えるためにつくられる。
ガイドラインが「どう作るか」の規定に重心を置くのに対し、ブランドブックは「なぜそうするのか」という背景や情緒を語る点に特徴がある。読む人の共感を得ることを主眼とする。
多くの場合、社内やパートナーへの共有を目的として編まれる。同じ言葉でブランドを語れる状態をつくり、日々の判断のよりどころになる。
成り立ち
brand(ブランド)と book(本)を組み合わせた語で、「ブランドを一冊にまとめた本」を字義通りに表す。ロゴ規定を集めた技術的な冊子とは異なる読み物として区別されるようになった。
ブランドの理念を関係者に浸透させる必要が高まる中で、規範を並べるだけでなく思想を語る媒体として位置づけられていった。
ブランドブックとブランドガイドラインの違い
ブランドガイドラインは、守るべき線を示して逸脱を防ぐための規定である。ブランドブックは、なぜその線があるのかを納得してもらうための読み物にあたる。前者は判定のために引かれ、後者は理解のために読まれる。読まれ方が違うため、作り方も変わる。
効き目の現れ方でも分かれる。規定は、知らない人が使っても結果を揃えられるが、書かれていない場面では働かない。読み物は、その場で判定はできないが、書かれていない場面に出くわしたときの判断の傾きをつくる。どちらが欠けても、片方の穴は埋まらない。
ブランドガイドラインの項へ →ブランドブックとインナーブランディングの違い
インナーブランディングは、社内に像を浸透させる取り組み全体を指す。ブランドブックは、その取り組みで使われる道具の一つにあたる。冊子を配ることと浸透が起きることは同じではなく、渡した時点で完了と見なすと、読まれないまま棚に残る。
見分けの軸は、成果物か営みかという違いにある。ブランドブックには納品の日があるが、浸透には終わりの日がない。冊子が配られた時点で完了と見なされると、以後それが開かれる機会は生まれない。入社時の説明、制作物の判断が割れた場、外部への発注の顔合わせ——本を持ち出す場面を運用の側へあらかじめ組み込むところまでが、作る作業と対になる。
インナーブランディングの項へ →使いどころ
ブランドブックは、新しく加わったメンバーへの導入や、外部パートナーとの目線合わせの場面で用いられる。仕様の細部よりも、世界観の共有を狙う。
ブランドガイドラインやインナーブランディングと組み合わせると、思想の共有から具体的な運用までを段階的に橋渡しできる。
実務でのチェックポイント
- 配った後、社内の会議でその内容が引用された場面があるかを確かめる。引用されていないなら、道具として使われていない。
- 新しく加わった人に読んでもらい、明日からの判断が変わる箇所を挙げてもらう。挙がらないなら、読み物として閉じている。
- 掲載した写真や事例が、実際の仕事の様子と離れていないかを見る。理想の姿だけが並ぶと、自分の話として読まれない。
- 改訂の責任者と見直しの周期を、冊子の奥付に書き込んでおく。担当が空欄のままなら、事業も体制も変わった後まで、制作時点の言葉と事例が現在のものとして参照され続ける。
よくある誤解
立派な冊子を作れば理念が伝わる、という期待が最も外れやすい。読み物としての完成度が高いほど、受け取る側は鑑賞する対象として扱い、自分の判断には接続しない。伝わったかどうかは、読んだ後に誰かの選択が変わったかで測るしかなく、配った数や好意的な感想からは分からない。
対外的な体裁を意識しすぎて、社内で使えない内容になる崩れ方もある。外向けに整えた言葉は角が取れ、誰も反対しない記述へ寄りやすい。社内で働く記述は、何を選ばないかに触れているもので、その部分は外から見ると尖って映る。宛先を混ぜると、どちらにも届かない一冊ができる。
よくある質問
ブランドブックは外部に公開すべきですか?
目的で決まる。社内の判断を揃えるために作ったものは、率直に書かれているほど効くため、外向けの配慮を入れると弱くなる。外に見せたい場合は公開版を別に用意するほうが、両方の役目を保てる。一冊で兼ねようとすると、社内で使えない内容へ寄りやすい。
ブランドブックはどのくらいの分量が適切ですか?
一度で読み切れる範囲に収まると扱いやすい。厚くなるほど参照される場面が限られ、通読されないまま置かれる。網羅を目指す部分は規定の側へ寄せ、読み物には判断の傾きをつくる内容だけを残すと、分量は自然に絞られていく。
作った後は何をすればよいですか?
使われる場面を先に決めておく。入社時の説明、外部の協力先との顔合わせ、新しい企画の起点など、実際に開く機会が用意されていなければ、内容の良し悪しに関わらず参照されない。読ませる計画ではなく、使う場面の計画として組む。