ジャーナル · UI/UX2026.06.20

「使いやすい」の先を聞く──ユーザーリサーチでブランドの現在地を測る

ユーザビリティテストは回している。タスクは達成できるし、迷う箇所も潰した。けれど、その先をどう活かせばいいのか。「使えるか」を確かめるリサーチは整っていても、「どんな会社だと思われているか」を測る仕組みは、意外と空いている。ユーザーの頭の中にある像を測らずに、ブランドは語れない。この記事では、リサーチの基本の型を押さえたうえで、ブランド知覚まで踏み込んで聞く設計へと視点を広げていく。

目次
  1. リサーチ実務の型──設計・テスト・分析の要点
  2. タスク達成率では拾えないもの
  3. リサーチは、約束と実体験のずれを測る装置
  4. 文字起こしはAI、問いと解釈は人。健康診断として経営へ

— 01 —リサーチ実務の型──設計・テスト・分析の要点

まず土台になる型を押さえる。ユーザーリサーチはおおまかに、設計実施分析の三つの局面で進む。設計では、何を知りたいのかという問いを一つに絞ることが最初の要点だ。あれもこれもと欲張ると、どのデータも中途半端になる。「この画面で迷わず登録できるか」なのか「このサービスをどう捉えているか」なのか。問いが決まって初めて、聞き方が決まる。

実施では、代表的な手法としてインタビューユーザビリティテストがある。インタビューは、なぜそう感じたか・普段どうしているかといった背景を言葉で引き出す。テストは、実際に操作してもらい、どこでつまずくかを観察する。ここで大事なのは、誘導しないことだ。「使いやすいですか」と聞けば、多くの人は気を使って肯定する。行動を観察し、開かれた問いで語ってもらう姿勢が、素のデータを守る。

分析では、集めた声を、印象的な一言に引きずられずに扱う。声の大きい一人の意見と、多くの人に共通するパターンを分けて見る。何人がどこでつまずいたか、どんな言葉が繰り返し出たか。数と傾向で捉え直すことで、思い込みの補強ではなく、発見のための分析になる。ここまでが、どんなリサーチにも共通する基本の型だ。次章から、この型を「使いやすさの先」へ広げていく。

「使いやすいですか」って聞くと、みんな優しいから「はい」って答えてくれるんですよね。でもそれ、ほとんど情報になってない。どんな会社だと思いました、って像を描いてもらうと、急に本音の輪郭が出てくる。聞き方ひとつで見える景色が変わるのが、リサーチの怖くて面白いところです。

— 02 —タスク達成率では拾えないもの

ユーザビリティテストは強力だが、測れる範囲には輪郭がある。タスク達成率や所要時間は、「使えるか」をきれいに映す。けれど、その数字が満点でも取りこぼすものがある。このサービスをどんな会社だと思ったか、また使いたいと感じたか、人に薦めたいと思ったか。使えること好きになることは、別の軸なのだ。全タスク成功でも、印象に何も残っていない、ということは起こりうる。

この見えない層を拾うには、ブランド知覚を聞く質問を意図して設計する必要がある。たとえば、このサービスを人にたとえるとどんな人か、初めて触れたときどんな印象を持ったか、似たサービスと比べて何が違うと感じたか。抽象的に思えるが、こうした問いには、達成率には現れないブランドの像がにじむ。使い勝手の質問の合間に、こうした知覚の質問を織り込んでいく。

設計のコツは、良し悪しを直接聞かないことだ。「良い印象ですか」ではなく「どんな会社だと思いましたか」と、像そのものを描写してもらう。評価を求めると建前が返り、描写を求めると本音の輪郭が出る。タスク達成率という定規で測れるものと、言葉でしか掬えないものを、意識して分ける。この切り分けが、リサーチをユーザビリティの先へ進める分かれ目になる。

— 03 —リサーチは、約束と実体験のずれを測る装置

ブランド知覚を聞く意味は、一つの視点で腹落ちする。リサーチは、ブランドが掲げる約束ユーザーが実際に受け取った体験の、ずれを測る装置だ。会社は「誠実で親しみやすい」と掲げているのに、ユーザーは「事務的で距離がある」と感じている。この差分こそが、次に手を入れるべき場所を指し示す。約束と実体験が一致しているかは、内側からは見えない。ユーザーの頭の中を覗いて初めて分かる。

だからこそ、ブランド知覚を測る前提として、そもそも約束が言葉になっていなければならない。自分たちがどう思われたいかというコアが無ければ、ずれを測ろうにも、基準となる目盛りが無い。ここで03は、01や02の土台にもなる。何を聞くべきかは、自分たちの約束から逆算して決まる。コアが空白だと、知覚を聞いても、ただの感想の寄せ集めになってしまう。

そして、このずれの報告には、もう一つの働きがある。「約束と体験がここでずれています」という発見を持ち込むことは、デザイナーの立ち位置を変える。画面を整える人から、ブランドの現在地を測って戦略に接続する人へ。ずれの報告は、デザイナーを戦略の席に座らせる切符になる。使いやすさの改善提案は歓迎されるが、ブランドのずれの指摘は、経営の関心事そのものに触れるからだ。

— 04 —文字起こしはAI、問いと解釈は人。健康診断として経営へ

リサーチにも、AIに任せられる部分が着実に増えた。インタビューの文字起こし、大量の発言からのパターン抽出、頻出する言葉の集計。こうした量をさばく作業は、任せることで人の時間が空く。ただし、空いた時間で人がやるべきなのは、問いの設計解釈だ。何を聞くかを決めること、そして抽出されたパターンが何を意味するかを読むこと。ここはデータの量では代われない、判断の仕事になる。

AIが「こういう言葉が多い」と示しても、それがブランドの約束に対して良い兆候なのか、ずれの表れなのかは、コアと照らして人が読む。同じ「効率的」という言葉でも、それを目指すブランドには朗報だが、温かさを掲げるブランドには注意信号になる。抽出は道具に任せ、意味づけは人が握る。この分担が崩れると、綺麗なグラフの下で、肝心の解釈が抜け落ちる。

経営に価値を伝えるなら、ブランド資産の健康診断という言葉が効く。自覚症状が出る前に、約束と体験のずれを定期的に測っておく。数字に表れてから慌てるのではなく、兆しの段階で捉える仕組みだ、と位置づける。ユーザーの頭の中にある像を測らずに、ブランドは語れない。この記事の入口だったUIの人格の話とも、リサーチは地続きでつながっている。測って初めて、次に人格をどう調整するかが決められるからだ。

◆ 経営がここから判断すべきこと
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Highlite 編集部(2026) 「ユーザーリサーチ ブランド」をめぐる編集ノート

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