— 01 —ブランドコンセプトとは何か
ブランドコンセプトとは、そのブランドが「誰の・何を・どう引き受けるのか」を一行に凝縮した核のことです。キャッチコピーのように外へ見せる言葉とは限らず、社内の全判断の拠り所となる背骨だと捉えると役割がはっきりします。見せるための言葉ではなく、決めるための言葉だという点が肝心です。
良いコンセプトは、商品開発でも、言葉づかいでも、採用でも、「これは私たちらしいか」を判定できます。迷ったときに立ち返れば、進むべき方向が示される。逆に、聞こえは良いのに何も決められない一文は、コンセプトとして機能していません。判断に使えるかどうかが、良し悪しの分かれ目です。
だから作り方の目標は、美しい言い回しを探すことではなく、迷ったときに答えを出せる一行にたどり着くことにあります。飾りの美しさより、判断の切れ味を優先する。ここを取り違えると、立派に見えて役に立たない一文ができあがってしまいます。
コンセプトを一行に凝縮する作業、言うほど簡単じゃないんですよね。あれこれ盛りたくなるのを我慢して削る、その最後のひと絞りが正直いちばんしんどいです。
— 02 —良いコンセプトの条件と、効く理由
機能するコンセプトには、いくつか共通の条件があります。第一に相手が具体的であること。「みんな」ではなく、誰の心に届けるかが絞れている。第二に独自であること。競合が同じ言葉をそのまま言えてしまうなら、それは差になりません。誰にでも当てはまる言葉は、誰の記憶にも残らないのです。
第三に実体で裏づけられること。言葉が先走り、商品や体験が伴わなければ、コンセプトは空約束になります。第四に覚えやすく、判断に使えること。長い理念文より、短く手触りのある一行のほうが日々の現場で効きます。現場の人が暗唱できないコンセプトは、使われないまま忘れられます。
これらが効くのは、コンセプトが無数の意思決定を一方向に束ねるからです。人によって解釈がぶれる余地を減らし、接点ごとの分裂を防ぐ。結果として、顧客の頭の中に一つの像が結ばれやすくなります。一行の核があるだけで、組織全体の判断の質と速さが変わってくるのです。
— 03 —作り方の手順
手順は「集める→絞る→言い切る→試す」の四段で進めます。まず集める。顧客が本当に感じている価値、自社の強みの源泉、競合が言えていないことを、思い込みでなく素材として書き出します。素材が薄いまま言葉づくりに入ると、どうしても借り物めいた一文になってしまいます。
次に絞る。集めた素材から、「誰の・どんな願いを・どう引き受けるか」の三点に候補を落とし込みます。ここで捨てることを恐れないのが肝心で、全部を抱え込むと像がぼやけます。あれもこれもと欲張るほど、コンセプトは平凡になっていくと心得ておきましょう。
そして言い切る。三点を一行に凝縮し、飾りを削ぎます。修飾を足すより削るほうが、たいてい強くなります。最後に試す。社内の数人に見せて同じ像が浮かぶか、日々の具体的な判断(この施策はやるか)に使えるかを確かめる。使えなければ、まだ核になっていないということです。試して直す往復を、面倒がらずに回します。
— 04 —よくある失敗と最初の一歩
失敗の典型は、綺麗すぎて何も決められない一文になること。「感動を、すべての人へ」のような言葉は美しくても、相手も独自性も曖昧で、判断に使えません。心地よい響きに満足して、そこで手を止めてしまうのが落とし穴です。
もう一つは、言葉だけ先に立派にして、商品や体験がついてこないこと。コンセプトは実体とセットで初めて信頼になります。会議室で決めて終わりにせず、現場で本当に体現できるかまで確かめることが欠かせません。言葉と実態の距離が開くほど、顧客はしらけていきます。
最初の一歩は、「私たちは、誰の、何を、どう引き受けるのか」を素直な言葉で一行書いてみること。うまく書けなくてかまいません。そこから削り、絞っていくのが作り方の本筋です。
- コンセプトは判断の拠り所となる背骨の一行
- 相手が具体・独自・実体・覚えやすさが条件
- 集める→絞る→言い切る→試すで進める
- 綺麗で決められない一文は機能しない