統合型マーケティングコミュニケーション
広告・広報・販促など複数の手段を一貫した方針の下に統合し、矛盾のない伝達を目指す考え方。
意味
IMC(統合型マーケティングコミュニケーション)とは、広告・広報・販促・営業といったばらばらになりがちな伝達手段を、一つの方針の下でまとめ、受け手に一貫したメッセージを届けようとする考え方を指す。
背景には、接点が増えるほど発信がちぐはぐになりやすいという課題がある。どの経路で触れても同じ像が結ばれるよう全体を束ねることが、ブランドの印象を守るうえで重要になる。
成り立ち
接点の多様化に伴い、個別最適に陥りがちなコミュニケーションを統合する必要から提唱された枠組みである。手段を横断して整合を図る発想として、マーケティング論に定着した。
統合型マーケティングコミュニケーションとメディアミックスの違い
メディアミックスは、どの媒体をどう組み合わせて到達を稼ぐかという配分の設計である。IMCは、その配分に載せる中身が経路をまたいで矛盾していないかを問う。前者は枠の買い方の話であり、後者は語る内容が一つに収束するかの話で、扱っている層が違う。
見分けたいときは、うまくいかなかったときに何が起きるかを考えるとよい。配分を誤れば届く人数が足りなくなり、統合を欠けば届いた人の中で像が食い違う。人数が足りないのか、受け取られ方が割れているのかで、手直しすべき場所はまったく別になる。同じ不振に見えても、原因は別のところにある。
メディアミックスの項へ →統合型マーケティングコミュニケーションとトーン&マナーの違い
トーン&マナーは、見え方や語り口という表現の層をそろえる取り決めである。IMCは、何を約束するかという主張の層までそろえる。色や書体が統一されていても、広告と販促で顧客に示している約束が違えば、統合されたとは言えない。そろえる層が一段深いところにある。
担い手の位置も切り分けの軸になる。トーン&マナーは制作の現場で守られるが、IMCが問うのは部門をまたいだ計画の段階にある。できあがった制作物を並べて違和感を探す作業だけでは、部門ごとに別の目的で動いている状態までは見つけられない。見えている制作物の外側に、統合の課題は残る。
トーン&マナーの項へ →使いどころ
複数のチャネルや施策を同時に展開する際、メッセージや世界観をそろえる指針として用いられる。部門ごとに発信が分断されている組織ほど、統合の意義が大きくなる。
実務でのチェックポイント
- 同じ時期に世に出た広告、販促物、営業資料、採用ページを机に広げ、顧客へ差し出している約束を読み比べる。宛先ごとに口調が違うのはよいが、約束の中身まで別の会社の話になっていれば統合は名ばかりである。
- 各部門が追う指標を並べたとき、広告部門の獲得件数が伸びるほど営業側の商談の質が落ちるといった、引っ張り合いの構図が現れることがある。評価が噛み合わないかぎり、方針だけをそろえても統合は長続きしない。
- 直近で最も反応が良かった施策の言い回しが、他の接点にも取り入れられているかを追う。良い言葉が一つの部門に閉じているなら、共有の仕組みが働いていない。
- 外部の制作会社や代理店が複数入っている場合、各社に渡した説明資料が同じ版かを確認する。渡す資料が別なら、出てくるものが揃わないのは当然になる。
よくある誤解
統合を、すべての接点で同じ素材を使い回すことだと受け取ってしまう例がある。だが経路ごとに読まれ方も向き合う時間も違うため、同じ形をそのまま流し込めば、どこかで不自然な当てはめになる。そろえる対象は形ではなく、どの接点から入っても同じ約束に行き着くかどうかの側にある。形をそろえるほど統合されたように見える点が、この誤解を長引かせる。
旗振り役を一人置けば統合されるという見立ても外れやすい。各部門が別々の指標で評価されている限り、方針を共有しただけでは発信は寄っていかない。何を成果と見なすかが分かれたままだと、統合は会議の場でだけ成立し、実際の判断は元の指標のほうへ引き戻されていく。揃わない原因は、方針ではなく評価の仕組みの側にあることが多い。
よくある質問
IMCは組織が大きくないと必要ありませんか?
規模より、発信の担い手が複数いるかどうかで決まる。人数が少なくても、営業と広報と制作を別の人が担っていれば、語られる内容は自然に割れていく。むしろ小さいうちに揃え方を決めておくほうが、後から部門をまたいで調整するより手間は少なくて済む。規模ではなく、担い手が何人いるかで判断することになる。
チャネルごとに内容を変えてはいけませんか?
変えてよい。変えられないのは、約束の中身と、その約束が守られる順位のほうになる。言い回しや長さ、見せる順序は経路の性質に合わせて調整する対象で、そこまで固定すると読みにくいものができあがる。変えてよい層と動かせない層を先に分けておくと判断が速い。
統合の責任は誰が持つべきですか?
部門ごとの予算配分を動かせる立場の人が持つことになる。発信の食い違いは、多くの場合それぞれの部門が自分の目標に忠実に動いた結果として生じる。調整役に権限がなければ、揃えるよう促すことはできても、揃わない原因である評価の仕組みには手が届かない。