ジャーナル · 経営2026.06.24

同じ商品なのに、利益率が違う。——その差の正体

扱っているものはほとんど変わらない。それなのに、あの会社は一段高く売って、うちより利益を残している。原価は同じなのに、なぜ利幅だけが違うのか。

目次
  1. なぜ、あそこは高く売れるのか
  2. 利幅は「何屋として覚えられているか」の写し
  3. 覚えられ方を設計するのが、ブランディング
  4. 明日の一歩

— 01 —なぜ、あそこは高く売れるのか

仕入れ先も、扱う品も、提供する内容も、大差はない。それどころか、細かな手間のかけ方では自社のほうが上だと思うことすらある。それなのに、同業のあの会社は堂々と一段高い値をつけ、しかもその値段でちゃんと注文が入っている。

こちらが同じ値段を口にすれば、たいてい「高い」と言われて話が終わる。だから相場に合わせ、競り合いになれば相場より下げる。売上そのものは立っても、一件あたりに残る利益は薄い。件数を積み重ね、現場を目一杯動かして、ようやく月末の帳尻を合わせている。

違いはいったいどこにあるのか。腕なら負けていないはずだ。設備の質でも、見積もりの速さでも、納品後の対応でも、劣っている自覚はない。それでも利幅だけが、はっきり違う。この差の正体が見えないうちは、値上げに踏み切る根拠も持てない。根拠のない値上げは、ただの賭けにしかならないからだ。だから毎回、勇気ではなく相場に判断を預けてしまう。

同じような商品なのに向こうは一段高く売れている、というの、見ていて地味にモヤモヤしますよね。原価が同じなら、差は商品の外にあるということ。個人的にはここに一番の面白さがあると思っています。

— 02 —利幅は「何屋として覚えられているか」の写し

利益率の差は、原価の差でも、腕そのものの差でもないことが多い。差を生んでいるのは、客の頭の中で自社が「何屋」として覚えられているか——その一点だ。そして、その覚えられ方が、そのまま利幅の厚みに写し取られている。

たとえば「安く済ませたいときに頼む会社」として記憶されていれば、どれだけ丁寧に仕事をしても、相手が最初から期待しているのは安さである。少しでも高い値を出せば「らしくない」「あそこにしては強気だ」と受け取られ、値段そのものが不信の材料になる。一方で「難しい案件を安心して任せられる会社」「まず間違いのない会社」として記憶されていれば、同じ額でも、それは納得と信頼の対象になる。作業の中身は同じでも、値札の持つ意味がまるで変わってくる。

つまり利幅とは、日々こなしている仕事そのものよりも、その仕事が相手の頭の中でどの棚に分類されているかの反映なのだ。高く売れる会社は、腕が飛び抜けているのではなく、覚えられ方が違う。そしてその覚えられ方は、これまで何を引き受け、何を断り、どんな水準を約束してきたか——その積み重ねによって、時間をかけて形づくられている。

だから利幅の薄さは、価格の付け方の問題である前に、記憶のされ方の問題である。値札をいじる前に、記憶を疑う必要がある。

— 03 —覚えられ方を設計するのが、ブランディング

自社が「何屋」として覚えられるかを、成り行き任せにせず、こちらから設計する。誰の、どんな困りごとに応える会社なのかを定め、その像に沿って、仕事の受け方も、見積もりの出し方も、日々の見せ方も揃えていく。この営みを、ブランディングと呼ぶ。

鍵になるのは判断の一貫性だ。安い仕事も高い仕事も見境なく受け続けていると、覚えられ方は「なんでも屋」へと薄まり、それにつれて値段の根拠も薄れていく。逆に、引き受ける仕事と断る仕事のあいだに一本の筋が通っていれば、「あそこはこういう会社だ」という輪郭がくっきりと濃くなる。そしてその濃い輪郭こそが、高い値段を内側から支える。値段は輪郭の上にしか立たない。

これは、看板を派手にしたり、宣伝を打ったりする話ではない。その手前で、自社が選ばれる理由をどの棚に置くのかを、腹を決める話だ。利幅を厚くするとは、値札の数字を強気に書き換えることではなく、その数字が客の目に自然に映るような覚えられ方を、先につくっておくことである。順番を取り違えて値札だけを上げれば、値上げはただ客を逃がすだけに終わる。だが覚えられ方を先に整えておけば、同じ値上げが、むしろ格を裏づける動きとして働く。

— 04 —明日の一歩

まず、直近の受注を「安さで選ばれた案件」と「安さ以外の理由で選ばれた案件」の二つに仕分けてみる。おそらく後者の利益率は、前者よりもはっきり高いはずだ。その差額こそが、覚えられ方の値打ち——ブランドが利幅に変換されている金額だと考えていい。

次に、自社を高く買ってくれた客が、周囲に自社をどう説明しているかを思い出してみる。その一言が、いま自社が置かれている「何屋」の位置そのものだ。その位置のまま値を上げていきたいのか、それとも別の位置へ移したいのか——それを決めることが、利幅を設計し直す出発点になる。値上げに踏み切るのは、その次でいい。順番はいつも、覚えられ方が先、値札が後だ。自社の覚えられ方が今どこにあるのかは、無料の診断でおおまかに測ることができる。

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▸ 参考・引用
Highlite 編集部(2026) 利幅をめぐる実務ノート

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