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ジャーナル · ツール2026.06.24

生成AIをワークフローに組み込む──任せる工程と、手放さない工程

生成AIを業務に入れたい。でも「どの工程で使うのが正解か」が定まらないまま、ツールだけ増えていく。工程を分けずに丸ごと任せようとすると、速くはなっても、なぜか自社らしさが薄れる。分業の線をどこに引くかが要だ。

目次
  1. 工程を分解し、どこにAIを入れるか
  2. 「発散はAI・収束は人」が原則になる理由
  3. ブランドから逆算する──収束の判断基準はどこから来るか
  4. AIとの分業と、経営にどう効くか

— 01 —工程を分解し、どこにAIを入れるか

デザインの制作は、ざっくり六つの工程に分けられる。リサーチ(情報を集める)、発散(案を広げる)、ラフ(形の当たりをつける)、仕上げ(精度を上げる)、展開(サイズや媒体に広げる)、検品(崩れやミスを確認する)。AIを「使うか使わないか」で悩むより、この六工程のどこに入れるかで考えると、判断がぐっと具体的になる。

相性がよいのは、リサーチの下調べ、発散での案出し、ラフの当たり、そして展開の量産だ。いずれも「量を速く出す」ことに価値がある工程で、生成の得意が効く。逆に仕上げの最終判断と検品は、人が握るほうが安定する。工程ごとに向き不向きがあり、全工程を一律にAI化するのでも、逆に全部を避けるのでもなく、工程単位で組み込む型が現実的だ。

組み込みの前に必ず確認したいのが、権利と利用規約だ。生成物の商用利用の可否、学習データの扱い、出力の権利関係は、ツールや契約プランで異なり、しかも執筆時点でも変わり続ける。Firefly や Midjourney をはじめ、どのツールでも「今の規約はどうなっているか」を一次情報で確認してから業務に載せる。ここを飛ばすと、速さの代償が後で来る。

AIを入れて没個性になった、という声を聞くたびに思うのは、AIのせいというより、元から選ぶ基準がなかったのが可視化されただけ、ということなんですよね。AIは正直な鏡だなと。

— 02 —「発散はAI・収束は人」が原則になる理由

工程ごとに線を引いていくと、ひとつの原則に収れんする。発散はAIに、収束は人に。案を広げる発散はAIが速く量を出せる。だが、その中から一つを選び、磨いて決める収束を丸ごとAIに委ねると、出力が平均へ引き寄せられていく。

理由は、生成の仕組みそのものにある。多くの生成は、学習した膨大な事例の「もっともらしい真ん中」を返すように働く。だから収束をAIに任せると、無難で、どこかで見たことのある、平均的な答えに寄る。これは欠陥ではなく性質だ。発散の材料としては豊かでも、選び取る基準を持たないまま収束させれば、平均回帰は避けられない。競合が同じツールで同じように収束すれば、出てくる成果物は互いに似通っていく。

だから収束は人が握る。広げるのはAIでいい。むしろ人の何倍も広げてもらえばいい。けれど、その中から自社にとっての一つを選ぶ判断は手放さない。実務では、発散はAIに大量に出させ、そこから人が選び、選んだものを仕上げる、という順にすると効きやすい。逆に、AIが返した最初の一案をそのまま採用する運用に慣れると、選ぶ筋肉が衰えていく。この線引きが曖昧なまま「全部AIで」とすると、速いのに凡庸、という成果物になる。速さと引き換えに失うのは、まさに選ばれる理由になっていた尖りだ。

— 03 —ブランドから逆算する──収束の判断基準はどこから来るか

「収束は人が握る」と言っても、人なら誰でも正しく選べるわけではない。選ぶには基準が要る。その基準こそ、ブランドのコア・ガイドライン・トーンだ。何を大切にし、何を自社らしいとし、どんな声で語るのか。これが定まっているほど、AIが広げた大量の案から「自社の一つ」を迷わず選び取れる。

ここからAI時代の一つの結論が見えてくる。ブランディングされていない会社ほど、AIで没個性化する。選ぶ基準を持たないから、AIが返す平均へそのまま流れ、他社と見分けのつかない発信が量産される。逆にブランディングされている会社ほど、AIで加速する。明確な基準があるから、AIの速さを自社らしさの方向へまっすぐ増幅できる。同じツールを使っても、コアの有無で結果は正反対に開く。

つまりAIは、その会社が元から持っていたものを拡大する装置だ。個性があれば個性を、なければ没個性を、どちらも速く大きくする。だから収束の基準づくり、すなわちブランドのコアの言語化は、AIを入れる前提として避けて通れない。ツールの選定より前に、選ぶ基準の整備がある。

— 04 —AIとの分業と、経営にどう効くか

分業を整理すると、AIに任せるのは発散と量産、人が握るのは基準と収束、という形に落ち着く。デザイナーの職能も、手を速く動かす人から、判断の基準を設計し、AIの出力を選び束ねる人へと再定義されていく。作る速さより、選ぶ精度が価値になる。手が速いことは以前ほど希少ではなくなり、代わりに「なぜこれを選ぶのか」を言葉にできることが、これまで以上に効いてくる。

経営にこの話を上げるとき、工数削減だけで語ると天井が低い。工数はいずれどの会社も同じように下がる。差がつくのはその先、「判断基準の整備」に投資したかどうかだ。AIで速くなった制作を、自社らしさの方向へ増幅できるか、それとも平均へ流れるか。同じ投資額でも、基準のある会社ではAIが個性の増幅装置になり、ない会社では没個性の量産装置になる。この分かれ目を示し、基準の整備へ投資を誘導するのが、AI時代の提案話法になる。

自社にAIの速さを活かせるだけのコアがあるか。まずはそこを点検したい。判断の土台の有無は簡単な診断で確かめられるし、AIが読める形のブランドについては別稿で扱っている。

◆ 経営がここから判断すべきこと
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▸ 参考・引用
Highlite 編集部(2026) 「デザイン AI ワークフロー」をめぐる編集ノート

この論点、自社ならどう動くか。もう一歩ふみ込んで考えたくなったら、いつでも。

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